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Amplifon増収増益が示す補聴器市場の次の競争軸と成長戦略

2026年08月09日 コラム 読了目安 約4分

ニュースの概要

補聴器大手Amplifonは、2026年第2四半期に既存事業ベースの売上高が前年同期比4.7%増、調整後純利益が17.1%増になったと発表しました。売上高の伸びを上回る利益成長は、単なる需要回復だけでなく、商品構成や販売効率、運営費の管理が改善した可能性を示します。同社は通期見通しを維持しており、補聴器需要が景気や消費者心理の影響を受けながらも底堅く推移しているとの判断がうかがえます。米国ではOTC補聴器の価格帯が広がり、店舗とオンラインの購入経路も増加しています。今回の決算は、業界の競争軸が製品性能だけでなく、相談から購入後の調整までを含む顧客接点の設計へ移っていることを浮き彫りにしました。

引用元: Amplifon、Q2 2026で増収増益を発表し通期見通しを維持(Hearing Tracker)

分析・見解

増収4.7%より重要なのは利益17.1%増という数字の中身

今回の決算で重要なのは、売上高の4.7%増そのものより、調整後純利益が17.1%増と大きく伸びた点です。補聴器事業では、売上を増やしても専門スタッフの人件費、店舗維持費、試聴や再調整に伴うサービス費用が膨らみやすく、売上高と利益が同じ比率で伸びるとは限りません。利益の伸びが売上の伸びを上回ったなら、比較的高付加価値の商品が選ばれた、店舗当たりの生産性が上がった、または仕入れと販促の効率が改善したと考えられます。ここから見えるのは、補聴器が成熟市場に近づくほど、出店数よりも一店舗が生み出す顧客価値が重要になるという構造です。

OTC普及後の市場は奪い合いでなく「悩みの段階」で分かれる多層構造

OTC(処方箋なしで購入できる市販型)補聴器の拡大は、従来型の専門販売を直ちに置き換えるものではありません。軽度から中等度の聞こえの悩みを持つ人にとって、低価格商品やオンライン購入は初めて試す入口になります。一方、左右の聴力差が大きい人、騒音下での会話に困る人、装用後の細かな調整を必要とする人には、専門家による測定や継続支援が欠かせません。つまり市場は、専門店とOTCが一つの顧客を奪い合う単純な二分法ではなく、悩みの段階に応じて入口が分かれる多層市場へ変化しています。Amplifonのような事業者にとっては、OTCを競合商品として拒むより、自己購入者を検査、相談、上位機種、保守契約へつなぐ導線を設計できるかが勝負になります。

AI搭載を謳うだけでは不十分、評価指標は生活実感の改善へ

技術面では、AIによる音環境の分類やスマートフォンを使った遠隔調整が差別化の中心になります。ただし、AI搭載という表示だけでは長期利用を促せません。利用者が実感する価値は、レストランで会話が聞き取りやすくなる、テレビの音量を下げられる、家族との会話で聞き返す回数が減る、といった生活場面の改善です。したがって、評価指標も新機能の数から、装用継続率、再来店率、返品率、調整完了までの日数へ広げる必要があります。特にアプリの操作が難しい高齢者では、本人だけでなく家族や介護職が支援できる画面設計が普及率を左右します。

独自の視点、競争優位は「失敗購入の確率を下げる仕組み」に移る

独自の視点を一つ挙げるなら、今後の競争優位は「最も安い補聴器」ではなく「失敗購入の確率を最も下げる仕組み」に移ることです。補聴器は購入後に使われなくなると、価格の安さが価値に変わりません。購入前の聞こえの確認、装用練習、生活環境に合わせた調整、一定期間後の再設定を一続きの体験にできる企業ほど、広告費を抑えながら紹介と再購入を得やすくなります。

今後は、米国のOTC市場で価格競争が進む一方、専門サービスを伴う中高価格帯では信頼性と継続支援が問われます。欧州や日本では、制度、保険、家族の購買関与が異なるため、米国の販売モデルをそのまま移植するのは危険です。国ごとに店舗、オンライン、医療機関、介護事業者の役割を組み合わせ、顧客獲得費用と継続利用率を比較することが、通期の成長を持続させる条件になります。

ビジネスへの影響

経路別の売上高でなく獲得後1年の利益で判断する

企業の意思決定者がまず確認すべきは、販売経路ごとの売上高ではなく、顧客を獲得してから一年後までにどれだけ利益を生むかです。OTC商品は購入の手軽さが強みですが、返品や未使用が多ければ広告費と物流費が利益を圧迫します。オンライン販売では、返品率、問い合わせ件数、アプリ登録率、初回調整の完了率を商品別に追跡し、価格だけでなく継続利用を含む採算で判断する必要があります。

店舗の役割を分担しオンライン誘導後の支援範囲を明確化

店舗網を持つ企業は、全店舗を同じ役割にするのではなく、検査と相談に強い拠点、短時間の受け取りや再調整に特化した拠点、地域医療との連携を担う拠点に分けると投資効果を測りやすくなります。オンラインで購入した顧客を店舗へ送る場合も、無料相談を無制限にするのではなく、初回設定、一定期間後の確認、故障対応などサービス範囲を明確にしておくことが重要です。

価格帯だけでなく利用場面で商品を区分し契約は総費用で比較

商品企画では、価格帯を増やすだけでは不十分です。軽度の聞こえの悩みに向く入門機、騒音下の会話を重視する中価格帯、個別調整や遠隔支援を含む上位機というように、利用場面と支援内容で区分すると販売員も説明しやすくなります。メーカーとの契約では、端末価格だけでなく、アプリの更新、データ連携、修理期間、販売後の教育費まで含めた総費用を比較すべきです。

次期指標に装用継続率や返品率を組み込むべき理由

次の四半期からは、売上成長率に加えて、装用継続率、返品率、店舗当たりの調整件数、顧客紹介率を経営指標に組み込むことを勧めます。Amplifonの利益成長が示すように、需要がある市場でも収益は運営設計によって大きく変わります。OTCを低価格の脅威と見るのではなく、専門サービスへつなぐ入口として再設計できる企業が、価格競争を避けながら市場全体の拡大を取り込めるでしょう。

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